【品種(群)】エチオピアのエアルームを探る

【品種(群)】エチオピアのエアルームを探る

エチオピアのコーヒーを飲んだことがある人の中には、「Heirloom」という単語を見たことがある方が多いのではないでしょうか。 しかし、「Heirloom」という言葉が何を指しているのか厳密に理解できている人は少ないように感じます。

“Heirloom”の意味

プログレッシブ英和中辞典によると、”Heirloom"という言葉は「(先祖伝来の)家宝;世襲財産」と定義されています。 しかし、この言葉は、この国に自生する多くの野生種や遺伝子的に未定義の品種の総称として用いられることが多いです。現在、エチオピアには1万から1万5千ものエアルームがあるとされており、そのほとんどは正式な遺伝学的な調査がなされていません。 多くのエアルームは野生種として誕生しましたが、一部は国内の様々なコーヒー農園に持ち込まれ、栽培、収穫、加工されています。

JARC品種と土着品種

エアルームは、通常JARC品種土着品種(Local Land Race:ローカル・ランド・レース)の2つのグループに分類されます。 JARC品種とは、ジンマ農業研究センター(Jimma Agricultural Research Center)が、病害虫への耐性と収穫量の増加を目的に開発した品種で約40の品種があります。一方、土着品種とは、地域の栽培環境に適合し、長年にわたって栽培されてきた品種群を指します。こうした品種群は、エアルームの他にも、リージョナル・ランド・レース(Regional Land Race)やエチオピアン・アセッションズ(エチオピア原生種:Ethiopian Accessions)があります。

エチオピアにおけるエアルームの識別

エチオピアには推定で1万から1万5千ものエアルームがあり、収穫量やカップクオリティ、風味、耐病性など、それぞれの品種に様々な特性があります。 しかし、数多くあるエアルームの最大の問題は、品種の識別です。エチオピアは遺伝的多様性に富んでおり、多くの品種が近接して生育しているため品種を識別することが困難な状況です。 そのため生産者が長年の経験に基づいて品種を判別しているのが現状で、大規模な遺伝的検証は不可能に近いです。 また、エチオピアには1万種以上の品種が存在しますが、そのいずれかを大規模に栽培することは困難とされています。なぜなら、それぞれの品種には独自の栽培要件があり、国内の特定の地域の栽培環境に適合していることが多いからです。 例えば、Bedessa/Baddessa(ベデッサ/バデッサ)、Kurume/Khudumi(クルメ/クドゥミ)、Miqe(ミケ)、Sawa(サワ)、Wolichu(ワリチュ)といった品種はグジ地域の固有品種で、Kurume/Khudumi(クルメ/クドゥミ)、Dega(デガ)、Wolisho(ウォリショ)といった品種はゲデオ地域の固有品種です。このため、国内での品種の移植は必ずしも最善策とは言えないのです。

品種の不透明性が与えるステークホルダーへの影響

生産者にとっては、品種を特定し、潜在的な買い手に対して品種に関する情報を提供することは、エチオピアのサプライチェーン全体のトレーサビリティを向上させるだけでなく、生産者自身の経済的な安定にもつながります。 現状、品種の特定が難しく、エチオピアの生産者は、明確な品種の透明性を奪われ、より高い収入を得る機会を奪われているという見方をすることもできます。 また、品種の不透明性は、消費者やバイヤーにとっては、別の問題を引き起こします。 消費者にとっては、エチオピアの「Heirloom」と記載されたコーヒー豆を手に取ったとき、1万種以上の品種の中から選ばれた豆であるという時点までしかトレースできないため、どの品種を提供されているのかが不明確なことが多いです。 一方、バイヤーにとっては、明確な品種を特定できず、エチオピアのコーヒーを品種ではなく、産地や標高、カッピングスコアで区別せざるを得ない場合があるのです。 このように、エチオピアの品種の透明性を高めることは多方面でポジティブな影響を与えることができますが、実際に品種の完全な透明性を得るには長い時間がかかりそうです。 将来的には、消費者がカフェで提供されるエチオピアのコーヒーの詳細を求めれば、ロースターはどの品種なのか明確に回答できるようになるかもしれません。 透明性はサプライチェーンに浸透し、すべてのステークホルダーに利益をもたらすでしょう。

カップの特徴

一般的にエチオピアのコーヒーは、フローラルでフルーティなカッププロフィールを持つことが多いですが、その特徴は産地によって大きく異なります。 例えば、グジ地域ではベリーやジャムのようなフルーティーなコーヒーが多く、シダモ地域ではアプリコットのようなフローラルな風味が強いと言われています。

参考データ

・PERFECT DAILY GRIND , Exploring Ethiopian Heirloom Coffee Varieties , 最終閲覧日:2022.9.9  

 URL:https://perfectdailygrind.com/2020/10/exploring-ethiopian-heirloom-coffee-varieties-nardos-coffee-export/

・PERFECT DAILY GRIND , Understanding The Myth of Heirloom Variety Coffee , 最終閲覧日:2022.9.9  

 URL:https://perfectdailygrind.com/2019/03/understanding-the-myth-of-heirloom-variety-coffee/

・cirad , Arabica coffee (Coffea arabica L.) local landrace development strategy in its center of origin and diversity , 最終閲覧日:2022.9.9  

 URL:https://agritrop.cirad.fr/540084/

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