【品種】流行を先取りしてドヤ顔しよう!〜インドネシア独自品種編〜

【品種】流行を先取りしてドヤ顔しよう!〜インドネシア独自品種編〜

はじめに

ブラジル・ベトナム・コロンビアに次いで世界4位の生産量を誇るコーヒー大国、インドネシア。東南アジアに位置するその国は、生産されるコーヒーのうち90%がロブスタ種であることや、「アーシー」「スパイシー」と表現される独特の風味から、スペシャルティコーヒーシーンであまり見かける事はありませんでした。
しかし、精製技術の進歩や設備の近代化、土壌に適した品種改良により、近年はスペシャルティコーヒーの流通量を増やしつつあります。 当店Layers coffeeも先月、インドネシアのナチュラルプロセスをリリースしましたが、従来のインドネシアらしくなく、非常にクリーンで華やかな風味は大人気でした。 当店の山浦が他社の焙煎士にコーヒーを飲ませたところ「エチオピアのナチュラル?」と回答されたエピソードは、インドネシアが新しいステージに突入した証明と言えます。
スペシャルティコーヒー業界において、これからさらに流通するであろうインドネシア。今回はインドネシアの特徴でもある独自品種に焦点を当て紹介します。
Layers coffeeのブログを読んでくださる方々はさぞかしスペシャルティコーヒーがお好きで、品種や精製方法といった知識に飢えている事でしょう。安心してください。何を隠そう僕もその1人。これからの流行を先取りして、僕と一緒にドヤ顔しましょう。

インドネシアで育つ独自品種のコーヒーたち

アラビカ種は安定して生産できる条件が限られており、約1000mというインドネシアの低い標高には適していません。そのため、中南米やアフリカ諸国と比べ厳しい条件での栽培が強いられており、インドネシアでは品質の高いコーヒーを安定して生産するために、独自の研究で土壌に合った品種が多く開発されました。以下、代表的な6つの品種を詳しく紹介します。

S795

インドネシアで最も一般的な品種として知られているS795は、多くのカッパーからメープルシロップやブラウンシュガーといったフレーバーを感じると言われています。 この品種は1970年頃インドから持ち込まれ、現在ではバリ島やトラジャで多く栽培されており、リベリカ種とケント種の交配種です。
インドネシア・コーヒー・カカオ研究所の研究員であるレトノ博士は「S795は、コーヒー栽培が初めての方にお勧めの品種です。栽培は難しくなく、多くの堆肥を必要とせず、様々なレベルで成長することができます。またリベリカのDNAがS795に強い根系を与えており、このコーヒーの酸味を少なくしているのもリベリカで、よりまろやかに感じます。」と評価します。 特段、収量が多い訳ではないですが、農家からの信頼を得ている品種です。

TIM TIM

ティム・ティムはかつてのインドネシア南部(現在の東ティモール)原産のもので、これを意味する「ティモール・ティムール」の略称とされています。アラビカ種とロブスタ種の自然交配種で、各種の酸とボディ感を持ち合わせていることが特徴です。さび病をはじめとする病害に耐性があることから、現在は交配親として使われ、カティモールやサルチモール等を生み出しています。インドネシア政府が主導となりティム・ティムの栽培を国内で広げた結果、次第に各地で自然な適応性が生まれ、ガヨ地域では「ガヨ1」、バリ島では「コピヨル」という別の品種に適応しました。進化先いっぱいのイーブイ的なコーヒーですね。

USDA762

この品種の原産はエチオピアのミザン・タファリ地域。あのゲイシャ種が発見された地域です。「有名なアイツと同じ中学出身」みたいなもんです。 1950年代にさび病への耐性を買われインドネシアへ持ち込まれましたが、現在はより病耐性のあるロブスタ種や交配種の出現により収穫量は激減し、高標高の限られた地域のみ栽培されています。今では人気も少なく収穫量も多くはないと哀れな扱いを受けていますが、この国のコーヒー栽培の歴史において、重要な存在であることには違いありません。どうか彼を忘れないでください。

カルティカ

カルティカはカトゥアイの亜種で、これを意味する「コピ・アラビカ・ティペ・カタイ」の略称です。カトゥアイらしい爽やかな風味と明るい酸味が特徴ですが、病害虫に弱いことが難点とされています。冒頭に紹介したようにインドネシアのコーヒー農園は比較的低標高に位置しており、現在でもさび病が多くの地域で蔓延しているため、カルティカを栽培できないのが現状です。 しかし、ジャワ島中部の山岳地帯にあるコーヒー産地、ウォノソボの一部の農家らはカルティカを愛用しています。ここではカルティカの木はよく育ち、現地でも安定した市場があるようです。知っていれば鼻が高い、非常にニッチな品種という事です。

アンドゥンサリ

アンドゥンサリはカティモールの亜種で、インドネシアで現在最も注目されています。この品種もカルティカと同じく病害虫に弱く、栽培は手厚い管理を必要としますが、1ヘクタール当たり2.5トンという高い収量と優れた香りやフレーバーを持ち合わせ、スマトラ島のカヨ・アロ地区をはじめとする地域で広く栽培されています。 お久しぶりの登場となるレトノ博士は「私たちが開発・発表したインドネシアの全コーヒー品種の中でアンドゥンサリが勝者です」と、お気に入りのようです。

アテンスーパー

こちらもカティモールの亜種で、アチェ州原産とされておりアテン種の矮種です。スマトラらしいハーバルな印象やトロピカルフルーツを思わせる果実感が特徴です。アテン種の中でも実や葉が大きく、そのため風通しも良く日光に当たる範囲も広いので、成長が早いのが特徴です。

終わりに

インドネシアは品種を混ぜ合わせ1つのロットを作成していることが多く、当店で取り扱っているインドネシアもTIMTIMとアテンスーパーの混合ロットになっています。そのため品種を単体で楽しむことは難しいかもしれませんが、それを知っていることで味わいに思いを馳せることはできます。 正解がないコーヒーの世界は、裏腹に間違いもない世界なのです。 つまりは何を言っても間違いではない世界。 ぜひ気になっているあの子の前でうんちく語りましょう!!

(合同会社Layersは一切の責任を負いかねます。)

参考データ

・PERFECT DAILY GRIND , Exploring Five Popular Indonesian Coffee Varieties , 最終閲覧日:2023.9.13  
 URL:https://perfectdailygrind.com/2020/10/exploring-ethiopian-heirloom-coffee-varieties-nardos-coffee-export/

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